dari88's blog 2

dari88の雑記帳です

今日のコーヒー自家焙煎: コーヒーの不都合な真実

産地の味の違いというものがこれ程ないとは思っていませんでした。これはコーヒーの豆を煎って商売をしている人にとっては営業上大変に不都合なことだと思います。ラーメン屋と比べて個性が出しにくいということです。

昔から特に味に拘るでもなくいろいろな産地のコーヒーを煎ってお茶代わりに飲んできましたが、特にこの豆は美味しいとか思ったことはありませんでした。頭のなかに世界地図を広げて、う~む、これはアフリカだよなとか、パプアニューギニアってどんなとこよ?とか産地の違いを楽しんではいましたが・・・。今も昨日煎ったモカマタリを飲んでいますが、やはりモカはモカの味だよな~、と私の感性は訴えています。しかし、飲み比べの実験を行うと同じ味という現実・・・。困ったものです。

商売をする上ではどうしても豊富なラインナップを揃える必要があります。これが「どれを飲んでも同じ味」ではお客の方が許してくれません。それで各産地に適当な焙煎度を割り当てて味の違いを演出しているというのが業界の実態なのだと考え始めています。田口さんのこの表というのは役者の配役表みたいなものなんですね、きっと。

表:

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役者は同じでも配役を変えればお店の個性を演出できるという訳です。豆の挽き方や抽出法を変えればさらに個性を際立たせることが可能です。まあお客の側が違いを求めるのですから、それでいいんじゃないでしょうか。

 

さて、産地の味の違いが無い理由と反論を考察してみます。

  • 私の舌が鈍感である
     私にも日本米とタイ米の違いは判別できます。少なくともその程度の違いは無いと断言できます。もしかするとコシヒカリササニシキの違い程度はあるのかもしれませんが、私にはそんな些細な違いを判別して喜ぶ感性はありません。
  • 私の感性は研ぎ澄まされていない
     私の頭には世界地図がある程度は入っています。先に産地を聞いてから飲めば、先入観が原因で、産地によって違う印象を感じる可能性はあります。しかし所詮は感性の話しですから、勝手にしろということになります。
  • アマチュアには産地の味の違いを出せない
     何か特殊な事をしないと産地の違いが出ないということでは、信憑性が疑われます。黒魔術の世界には近付かないようにしましょう。
  • 手網では産地の味の違いが失われてしまう
     仮にそうだとしたら、所詮その程度の違いということで、バカバカしい話ではあります。自家焙煎用の焙煎機などというものは、ドラム缶を横にして火にかけて回している程度の実につまらない機械です。手網と五十歩百歩じゃないですか。
  • フルシティーローストまで焼いてしまうと産地の味の違いが失われてしまう
     これはあり得ると思います。産地の違いを明確にするために浅く煎っているという業者さんが確か居たように思います。
  • 産地の味の違いなど元々存在しないか、あっても僅かなものである
     私はこの立場を取りたいと思います。味の決定要因は焙煎度が一番で、産地は最後です。

 

少し前にコーヒーの味の決定要因について仙台の宮嶋さんに質問したことがあります。

<仙台の宮嶋さんへの質問と回答>

Q: コーヒーの味の決定要因の順番を不等号で表現すると次のように書いて良いものでしょうか?

 焙煎度>焙煎後の時間・挽き方・抽出方法(温度・時間)>生豆の精製方法>産地・品種
 ※品種でロブスタは対象外

 

A: さて、コーヒーの味の目的が甘味で、均一性、クリーンに欠けるものだと前提された上での話しならです。ただ、農産物が先か味の確定が先かは、一概には言えないかも知れません。


宮嶋さんの答えは「例外はあるかもしれないが、概ねその通り」ということだと解釈しています。コーヒーのミルを良い物に変えた時の味の変化には衝撃を受けました。産地による味の違いにはこのような衝撃は決してありません。尚、産地による品質の違いはありますので、念の為。味の違いと品質の違いは全く別の概念ですから注意したいものです。

 

酸味や苦味といった味覚に星を付けて産地の違いを表現しておきながら、ローストの度合いを選ばせるというような通販のページをよく見かけます。こういうのは不誠実と言いましょうか、嘘八百を平気で書いていると言ってよいでしょう。

コーヒー業界の人がみんなペテン師だと言うつもりは毛頭ありません。中には誠実で正直な方も居られることでしょう。でも、きっと正直者はバカを見るという世界なんでしょうね。で、私だったらどうするか? と考えてみると、やはり一番売れる方法を考えると思います。「不都合な真実なんてどうでもよい、売れて利益を最大化できるものが正義である」と都合よく考えるでしょう。これってアングロサクソン系の考え方に毒されているということですよね?・・・(^^;;;

コーヒーの不都合な真実という主題で書いてきましたが、「こいつ、一体何を言っているんだ!」と皆さんの声が聞こえてきそうです。(笑)

 

今日のコーヒー自家焙煎: イエメン vs. グアテマラ

産地の違いシリーズもそろそろ終わりにしたいものです。いくらなんでもモカマタリなら違うでしょう!・・・と思いながら、今日はイエメン vs. グアテマラの対決です。

 

焙煎温度プロファイル: #31

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温度変化率: 1ハゼ以降 5.4℃/分

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生豆: イエメン マタリNo.9

焙煎度: 中深煎り

焙煎条件: 手網+銀紙ダンパー、200g、やや強火、

      三段焙煎法(10-15-20cm)

お味: 

 抽出: 半日後、カリタ式、85℃、3分10秒、300cc

     #32と同時に抽出して味を比べた

 香味: ◎ 合格です、美味しい

     #32と言葉にできる違いは無い。

 

焙煎温度プロファイル: #32

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温度変化率: 1ハゼ以降 4.9℃/分

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生豆: グアテマラ アグア・ブランカ

焙煎度: 中深煎り

焙煎条件: 手網+銀紙ダンパー、200g、やや強火、

      三段焙煎法(10-15-20cm)

お味: 

 抽出: 半日後、カリタ式、85℃、3分10秒、300cc

     #31と同時に抽出して味を比べた

 香味: ◎ 合格です、美味しい

     #31と言葉にできる違いは無い。

 

考察:

・この二つは1ハゼでの温度上昇のブレーキが全然違います。グアテマラの生豆は深い緑色で、イエメンマタリは黄色く枯れた感じのものです。グアテマラの方が1ハゼの時に揮発する成分が多いので温度上昇しないと解釈できそうです。

・豆によって温度上昇プロファイルが変わってくるというのは、多分こういうことを言っているのだと思われますが、手網の場合に調整を加えるべきかというと疑問が残ります。やるとすれば強くブレーキが掛かる豆の場合は第2段の高さを少し下げて13cmとかにするのでしょう。でも、どうせ味が変わらないのなら、放っておけばよいような気がします。

・味の比較の結果が出ました。微妙な違いがあるように感じましたが、まあ同じようなものです。個別に飲んで産地を言えるような代物ではありませんね。

・尚、このような味比較の試験はやらない方が良いと思います。その方が人生幸せでいられるでしょう。

・三段焙煎法で不味くなるような豆が存在するのか? という当初の命題に対する答えですが、そのような豆は存在しないとう結論でよいと考えます。

 

 

今日のコーヒー自家焙煎: 続 産地の違いって何なのよ?

産地の違いが全くないということでは困ったことになりますので、今日は生豆の精製法が明らかに違うマンデリンを煎ってみました。これと水洗式の豆を同時抽出して味を比較します。

 

焙煎温度プロファイル: #30

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温度変化率: 1ハゼ以降 4.1℃/分

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生豆: インドネシア マンデリンG1

焙煎度: 中深煎り

焙煎条件: 手網+銀紙ダンパー、200g、やや強火、

      三段焙煎法(10-15-20cm)

お味: 

 抽出: 一晩後、カリタ式、85℃、2分40秒、300cc

     #28のパプアニューギニアと同時に抽出して味を比べた

 香味: ◎ 合格です、美味しい

     パプアニューギニアと言葉にならない程度の違いです
 

考察:

・これまたショックな結果となりました。微妙に違いを感じるのですが、言葉になりません。一般消費者的な立場で言うと、バカバカしい程度の違いということになるでしょうか。もちろん家内も同意見で、違いは分からないということでした。

・因みに三段焙煎法による#27から#30の温度プロファイルを重ねると次の図になります。

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これを手網はブレが大きいと見るべきなのか、意外とブレが小さいと見るべきなのか、ネット上に情報が見当たらないので分かりませんが、私の結論としては味に有意差が認められないということなのです。これが商品で、もし価格が違ったら、多分怒っちゃうだろうなと思います・・・(^^;;;

 

今日のコーヒー自家焙煎: 驚きの事実! 産地の違いって何なのよ?

今日は手網三段焙煎法パプアニューギニアとケニアを煎ってみました。

今朝煎って夜に試飲して、今題名を変更して追記しています。驚くべきことに、パプアニューギニアとケニアは全く同じ味でした!

 

(1)パプアニューギニア

焙煎温度プロファイル: #28

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 温度変化率: 1ハゼ以降 5.3℃/分

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生豆: パプアニューギニア フィニステラ AA

焙煎度: 中深煎り

焙煎条件: 手網+銀紙ダンパー、200g、やや強火、

      三段焙煎法(10-15-20cm)

お味: 

 抽出: 半日後、カリタ式、85℃、3分、300cc
     ケニアと同時に抽出して味を比べた

 香味: ◎ 合格です、美味しい

     ケニアと全く同じ味です!

 

(2)ケニア

焙煎温度プロファイル: #29

 

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 温度変化率: 1ハゼ以降 6.5℃/分

 

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生豆: ケニアAA

焙煎度: 中深煎り

焙煎条件: 手網+銀紙ダンパー、200g、やや強火、

      三段焙煎法(10-15-20cm)

お味: 

 抽出: 半日後、カリタ式、85℃、3分、300cc

     パプアニューギニアと同時に抽出して味を比べた

 香味: ◎ 合格です、美味しい

     パプアニューギニアと全く同じ味です!
 

考察:

・1ハゼ以降の温度上昇率が肝心な所ですが、2回とも6±1℃に入っており問題無いと思います。このくらいの誤差ですと、ガス圧起因なのか、手網の高さのブレなのか、豆の性質なのか判別できそうもありません。

 

驚くべきことに、両者は全く同じ味でした。家内も同じ意見で、交互に飲んでも違いを識別できません。コーヒーは同じ煎豆を飲んでも、飲むたびに印象が違うのですが、産地が違っても全く同じ味とは・・・何で? 以下は仮説です。

・コーヒーは産地の違いなど殆ど無く、あるのは精製法の違いだけである。たまたま両者の精製法が類似していたためである?

・コーヒーはフルシティまで焼いてしまうと多少の産地の違いなど識別不能になる?

 

もう一つ言えることがあります。今回の焙煎温度プロファイルには多少の相違がありますが、味は全く変わらないという事実です。

・煎り止のタイミンが同じなら、多少の温度プロファイルの違いは味に影響しない?

 

今日は大変な収穫がある一日となりました・・・(^^;;;

 

12月8日 追記:

念のため本日夜に再度同時抽出を行なって味を比較してみましたが、同じ結果でした。両者の味は識別不能です。これをもって次のことは確実に言えます。

パプアニューギニア フィニステラ AAとケニアAAは、全く同じ味のフルシティーに煎ることが可能である。

 

12月9日 追記:

こうなると気になるので、#27のタンザニアAAとケニアAAを同時抽出法で比較してみました。結果、タンザニアの方が多少苦味が強いがその他の違いは分からないという程度でした。恐らく単独で飲んでどちらの豆か当てろと言われたら、分からないでしょう。抽出温度、時間、やり方や、豆の挽き方による味の変化の方が大きいと思います。また、朝・昼・晩、気分、直前に食べたもの等による印象の受け方の違いのほうが大きいのではないでしょうか。

仙台の宮嶋さんが「コーヒーは全てエチオピア」と言っている意味がよく分かります。

これら三種の豆の精製法は恐らく水洗式でしょう。次回は精製法が明らかに違うイエメンマタリ、マンデリンで味の比較をしてみたいと思います。

 

今日のコーヒー自家焙煎: 徒然なるままに

手網三段焙煎法

前回は大和鉄工所さんの焙煎データからヒントを頂いて新しい焙煎プロセスを設計しました。手網の高さが三段階になっているのでこれを三段焙煎法と言うことにします。

実はこれって私が昔からやっている焙煎法に近いものがあります。以前はだいたい5cmから始めて徐々に上げていき、肌色に変化した頃には10cmくらいで1ハゼを待ち、元気にハゼてきたら色の変化や煙を見ながら徐々に上げていき、2ハゼの頃には大体20cmくらいになっているという感じです。

高さを測ったり、時間を測ったりはしていませんでした。長年やっているうちに自然にそんなやり方になっていたというだけの話です。これでは人に伝えられませんし、再現性がありません。そういうことで、手網で誰でも簡単に失敗なく美味しく煎れる方法を研究し始めたわけです。

高さ一定というのが一番シンプルで、ある面では良いのですが、仕上がりが不安定になると思います。焙煎機のノウハウも取り入れた今回の三段焙煎法で一旦完成としたいと思います。

 

私の思い

焙煎機は誰でも簡単に豆を煎れるように作られているが、だからといって焙煎機だから美味しい豆が煎れるという訳ではない。

手網は焙煎機よりも豆を煎るのが難しいが、だからといって手網だから美味しい豆が煎れないという訳ではない。

 

大火力の焙煎法は多分駄目です

業務用のハイカロリーコンロを使い、30cmスタートで1ハゼ来たら3cm上げるなどという方法は恐らく駄目です。ミディアムローストなら分かりますが、フルシティーローストには無理があります。恐らく仕上がりが非常に不安定だと推定します。三段焙煎法は10-15-20cmですが、30cmスタートの場合、比例算では30-45ー60cmになります。これではアクロバットと言いましょうか、曲芸ですよね。三段焙煎法と同じ温度プロファイルを得ることは出来ないことはないにしても、非常に困難を伴うと思います。多分熱くてやってられない・・・(^^;;;

 

本当の豆の温度を知ることの重要性

焙煎機が測っている豆温度というものは本当の豆の温度ではありません。これに対し、赤外線放射温度計による測定は、焙煎機と違って本当の豆の温度を測っています。焙煎者や機械や測定位置による違いというものは存在しません。ここに極めて重要な意味があります。赤外線放射温度計による焙煎温度プロファイルは単なる傾向値ではなく絶対的なものですから、手網の人でも、焙煎機の人でも、大手ロースターの人でも、誰でも再利用できる共通の物差しなのです。

共通の言語がなければ意思疎通は難しいですよね。コーヒーの世界に魑魅魍魎が住むのは、この共通の言語が無いことが一因なのではないでしょうか?

 

次の課題は何だろう?

手網の標準的な焙煎法が一旦確立したとして、次の課題は何でしょうか。焙煎業者さんが言うところの豆の状態・違いによる微調整や煎り分けでしょうか。プロは再現性ということが最重要課題になると思いますが、アマチュアにとって再現性は重要課題ではないでしょう。要は美味しければよいのであり、失敗して不味いコーヒーにならなければ問題ない訳です。

だとすると、果たして三段焙煎法で不味くなるような豆が存在するのか? ということが次の命題だと思われます。

当分は今回の三段焙煎法でいろいろな豆を煎って、そんな豆が存在するのかを検証していきたいと思います。

 

今日のコーヒー自家焙煎: バッハの味を再現する?

「設計屋のBLOG」から得られた知見

(株)大和鉄工所の岡崎俊彦さんの「設計屋のBLOG」をひと通り読ませていただきました。コーヒーの自家焙煎をあくまで工学的な視点で見つめていて非常に参考になりました。

大和鉄工所のマイスターという焙煎機はバッハの田口さんとの共同開発なんですね。豆に与えるカロリーは、ガスの火力は一定にして、ダンパー(排気量)で調節するのが基本ということです。

排気量に関する記事を見るとこんな感じです。

 測定条件:
 ガス (LPG)/ガス圧(1.0kPa)/室温15℃/ダクト内径80mm
 ファンモータ回転数  風 速    風 量     風 温(排気温度)
  800rpm・・・4.40m/s・・・1.33㎥/min・・・204℃
 1000rpm・・・5.00m/s・・・1.51㎥/min・・・200℃
 1200rpm・・・5.65m/s・・・1.70㎥/min・・・197℃
 1400rpm・・・6.30m/s・・・1.90㎥/min・・・194℃


ダンパー制御の記事を見ると、ダンパーはプログラム制御になっているようです。「ダンパーをプログラム制御しているデータのたたき台は、当時バッハさんに残されていた3万例近い焙煎記録を基にしたものです」ということですから、大したものです。

  ダンパーのプログラム制御 (実例)
  生豆投入温度を感知して   ⇒ 20% ( 蒸らし開度) から始まり 
  豆温度178℃を感知して ⇒ 40% (1ハゼ開度) に 
  豆温度198℃を感知して ⇒ 60% (2ハゼ開度) に 自動制御


大和鉄工所のコーヒー焙煎機-機械系資料のページにも貴重な資料が掲載されています。「焙煎機の構造について」は是非読んでおきましょう。


温度計測ソフト「シュライバー」のページにある「シュライバーの詳細」にも貴重な情報が含まれています。この資料の図から次のことが分かります。

  • 火力調節は3段階になっている
     蒸らし送風800rpmでスタート
     1ハゼ送風1000rpmは1ハゼの1分くらい前から
     2ハゼ送風1200rpmは2ハゼの1分くらい前から
  • 2ハゼから50秒で煎り止しているので、フルシティーくらいと思われる
  • 全体的に6℃/分で上昇させているが、1ハゼ付近で4℃/分に減速している
  • 煎り止の豆温度は207℃、排気温度は233℃、差は26℃


豆が無いときのファンモータ1200rpmでの排気温度は197℃でした。ということは、吸気は意外に低い温度であり、ドラムの中で暖められて排気されているということでしょうか?

半熱風式ですからドラムからの輻射熱は維持されているので、排気温度も豆温度も最後まで上昇を維持していますが、2ハゼダンパー時に吸気している熱風というのはむしろブレーキになっているように思えます。(ガス圧が若干違うこと、吸気温度のデータが無いので確かなことは言えませんが)

2ハゼダンパーというのは料理でいうと「豚カツは余熱で芯まで火を通す」みたいな状況になっている気がします。

 

これまでの実験から得られている知見

豆の温度上昇の決定要因:
 ① 外部加熱(高温空気の温度と流量)
 ② 気化熱を奪われる現象(主に1ハゼ期間で顕著に影響が出る)
 ③ 豆の自己発熱(主に2ハゼ付近で顕著、煙の量に比例か?)


以下はあくまでも中深煎りでの話しであり、第三者が検証するまでは仮説ですが、

水抜き(蒸らし)の心配は無用
1ハゼまでの温度プロファイルの違いは味に影響しない
1ハゼ以降の温度上昇率が重要、特に煎り止前後のプロセスが味に影響するであろう
http://dari88-2.hatenadiary.jp/entry/2014/11/23/172308

「冷気を入れるとエグミが出る」などということはない。30秒に一回手網を火から外して温度を測っているが、エグミなど経験したことがない。「芯残り」という言葉をよく目にするが、手網には関係ない話し。焙煎機固有の問題であろう。

銀紙ダンパーを付けても燻り臭の心配は無用
http://dari88-2.hatenadiary.jp/entry/2014/11/29/145746

 

焙煎プロセスの設計

では、バッハの味を再現する手網焙煎のプロセスを検討しましょう。

①10cmスタート

中深煎りの場合、1ハゼまでの時間は風味に影響しないことが分かっているので、比較的に温度上昇が早い10cmとします。

②1ハゼ連続で15cmに(元気にハゼない豆は最初のハゼから1分後)

一般的に手網には温度計が付いていませんから、1ハゼの1分前と言われても目安がありません。1ハゼが連続し始めたということは「豆に充分カロリーを与えた」と考えて、ここで15cmに上げることにします。

③2ハゼ連続で20cmに

2ハゼ連続からは豆は自己発熱で酸化反応を続けます。温度を上げ過ぎない、熱暴走を避けるという考え方、むしろ「余熱で芯まで火を通す」くらいの気持ちです。この辺りで案外銀紙ダンパーの保温効果が威力を発揮するかもしれません。

それでは実験してみましょう。バッハの味が再現できるかな?・・・(^^;;;

 

今日のコーヒー自家焙煎

焙煎温度プロファイル: #27

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 温度変化率: 1ハゼ以降 5.2℃/分

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生豆: タンザニア AA

焙煎度: 中深煎り

焙煎条件: 手網+銀紙ダンパー、200g、やや強火、

      10cmスタート、1ハゼ連続で15cm、2ハゼ連続で20cm

お味: 

 抽出: 焙煎の一晩後、カリタ式、85℃、3分15秒、450cc

 香味: ◎ 嫌味を全く感じさせない良いコーヒー、美味しい
       明らかに一級品のお味です

 

考察:

・美しい焙煎温度プロファイルです。理想的な感じ!

・この温度プロファイルを今後のリファレンスにします。台所の壁に貼って、これを見ながら微調整するというのが良いかもしれません。

・「バッハの味を再現する?」という主題にしておきながら、実はバッハのコーヒーを飲んだことがありません。バッハの味は多分こんなだろうな~と思いながら今朝のコーヒーを美味しくいただきました・・・(^^;;;

 

今日のコーヒー自家焙煎: ミディアムローストもいいんじゃない?

普段は結構深く煎って生活のコーヒを飲んでいるのですが、イエメンマタリをフルシティーローストくらいで飲んでみるとちょっとな~と感じたので、珍しくミディアムで煎ってみました。これはこれで美味しいじゃないですか。やはり豆には焙煎業者さんが推奨する焙煎度合いというものがあるような気がします。

焙煎度合いの基準というものは日本国内で結構揺らいでいるもののようです。そうなると自分なりの基準を持たないといけません。dari88が今日現在考えている焙煎度合いの基準を次の表に示しておきます。

 

焙煎度合いの基準

焙煎度合 小区分 ハゼでの判断 温度の目安
中煎り ミディアム 1ハゼ連続の終わり 220℃~
ハイ 2ハゼ最初のピチッ 230℃~
中深煎り シティー 2ハゼ連続開始 235℃~
フルシティー 2ハゼ連続から30秒 235℃~

 ※ 温度は赤外線放射温度計で豆の表面温度を直接測定した場合です

 

では今日のコーヒー自家焙煎です。

焙煎温度プロファイル: #26

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 温度変化率: 1ハゼ以降 2.7℃/分

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生豆: イエメン マタリNo.9

焙煎度: 中煎り

焙煎条件: 手網+銀紙ダンパー、200g、やや強火、

      10cmスタート、10分30秒で少し上げた

お味: 

 抽出: 焙煎の半日後、ハリオV60、90℃、3分、450cc

 香味: ミディアムのコーヒーだな・・・、美味しい

 

考察:

・どうも手網の位置が狂いを生じたような気がする。これは12.5cmのプロファイル相当です。2.5cmというと誤差範囲のようにも思えますが、習熟すると人間って結構精度が高いと思うんですけどね?

・1ハゼが始まると温度上昇率が急に下がる現象が再現しているように思えます。ハゼながらエネルギーを放出しているんですかね?

 →(12/02 追記)ネットで調べたら(株)大和鉄工所さんの設計屋のBLOGを発見しました。1ハゼで最後の水分が抜ける時に温度上昇率は6℃/分から4℃/分に低下するようです。この原因は気化熱であるとしています。大和鉄工所さんはカフェ・バッハの田口護さんの焙煎機を作っているところですね。このBLOGも素晴らしいものがあります。貴重な発見でした。

焙煎機では温度測定に熱電対を使っています。この熱電対は豆とは点接触しており、豆温度とはいえ実際には豆の近傍の空気の温度を測っています。その構造も手伝って、豆の温度変化に対する応答は鈍感です。これに対し、赤外線放射温度計は豆そのものの表面温度を測っており、測定も高速です。焙煎温度プロファイルを見るときは測定法の違いを意識することが必要です。

今回の焙煎温度プロファイルでは、1ハゼで温度上昇率が11.7℃/分から2.7℃/分に急減速しています。このデータは1ハゼの現実をよく物語っていると思います。1ハゼは単にバチバチと音がしているだけではなく、豆は激しく変化しているんですね・・・。